山笑う季節 2015 山のパン屋さんの巻
2015年 05月 04日
野生植物の花の色では白が圧倒的に多いと何かの本で読んだ。ヒトの目には白でも昆虫の眼には紫外線が見えるのでまた特別な形や色に写っているらしい。この新緑の風景を鳥や虫たちはどんな色・形で見ているのかなぁと想像しながら臥龍山登山口に着いた。
登りはじめに見つけていた小さな看板「パンの家」を訪ねることにした。
よく注意して見ないと通り過ぎてしまう、一見普通の家。
この小さな看板がないとやり過ごすところだった。
「パン屋さんはこちらですか?」一人の男性に声をかけると
「そうです、どうぞどうぞ」と招き入れてくれた。
「昨日焼いたばかりなのでまだ奥の方は暖かいですよ。」
とすぐに薪の石窯に案内してくれた。
週一度しか焼かないというその石釜は、手を入れるとまだ暖かい。
昨日焼いたばかりなので、種類もたくさん揃っているそうで試食用のパン2種を準備してくれた。
「ここに座って食べてください」と案内された場所からは、今下山してきたばかりの臥龍山が正面に見渡せる。
「きれい!!臥龍山を見るための場所ですね!」
私が興奮気味に何度も「きれい!美しい!」を連発するので、主はまるで自分の子供か孫をほめられたように喜んでくれた。
ひとしきり臥龍山の魅力を語り合ううちに、「パン屋をするつもりは全然なかったんですよ」とこの場所で暮らし始めたいきさつを話してくれた。きっかけは、秋の夕刻の臥龍山の美しさだとか。「是非秋の午後この場所から山を見てください」とパン祭に誘ってくれた。
このパン屋さん、この山を訪ねてくれた人に食べてほしいので宣伝をしないのだとか。
臥龍山を本当に愛しているご主人の気持ちが伝わるお話でした。
荒地だったこの場所を何年もかかって地主から買い受け、家づくりから庭づくりまですべて本人の手作りとのこと。庭には小さな川まであるのです!
その小川にはリュウキンカが鮮やかな黄色の花をつけて、すっかり初夏の風景。
材料にこだわった美味しいパンをどっさり買い込んで、連休はパンの贅沢ということにした。
臥龍山の魅力が縁でできた出会い。紅葉の季節、パンを介して新しい臥龍山と人に出会えるかもしれない。
by dahai